代表挨拶
Message
“和室”から生まれた和室文化を無形文化遺産に
内田 青蔵
私たちは、今、岐路に立たされています。
幕末以来、伝統文化に新たに欧米文化を取り込み、世界に類を見ない住文化を構築してきました。ただ、欧米文化の浸透とともに、住文化の大勢は、古き良き伝統文化を次第に失い、欧米文化を基本とするものへ移行してきたように思います。
一般に、畳を敷いた部屋を“和室”と呼び、食事や睡眠、接客の場や宴会の場、雛祭りや節句の部屋といった様々な行為の場として慣れ親しんできました。しかし、そうした伝統文化を象徴する“和室”が、住まいの中から消えつつあるのです。それは単に、“和室”という部屋の消滅を意味するだけではありません。その場で行われてきた多様な生活行為から養われてきた様々な「ふるまい」や生活原理、生活体験、家の外や街まで繋がる空間把握や空間体験、そうした中で磨かれた感性の衰退、あるいは、空間としての“和室”を構築してきた伝統的技術や職人の世界という素晴らしい生産システムの喪失も意味するのです。
それらの伝統的な住文化を総称して「和室文化」と呼ぶとすれば、まさに、この失われつつある「和室文化」をもっと大切にしなければなりません。それらは一度失われると再興するのは極めて困難なものであり、「文化的持続可能性」を重視すべきです。
そこで、私たちは、今こそ和室の新生のために、住み手市民の皆様と一緒に、“和室”とかかわる研究者や行政の方、あるいは作り手である設計者、大工左官などの技能を持った職人の方、木材を産み育てる林業、建設業、畳や建具製作等の様々な生産にかかわる方がたが、それぞれの知見を持って、大きく団結する会をつくりたいと思います。
ここで改めて「和室文化」を総合的に把握し、その固有の価値や多義的意味を解き明かしながら、和室の重要性を世界に示し、無形文化遺産として国際認知されることを目指します。未来に向けた新たな「和室文化」を構築していくことを宣言したいと思います。
幕末以来、伝統文化に新たに欧米文化を取り込み、世界に類を見ない住文化を構築してきました。ただ、欧米文化の浸透とともに、住文化の大勢は、古き良き伝統文化を次第に失い、欧米文化を基本とするものへ移行してきたように思います。
一般に、畳を敷いた部屋を“和室”と呼び、食事や睡眠、接客の場や宴会の場、雛祭りや節句の部屋といった様々な行為の場として慣れ親しんできました。しかし、そうした伝統文化を象徴する“和室”が、住まいの中から消えつつあるのです。それは単に、“和室”という部屋の消滅を意味するだけではありません。その場で行われてきた多様な生活行為から養われてきた様々な「ふるまい」や生活原理、生活体験、家の外や街まで繋がる空間把握や空間体験、そうした中で磨かれた感性の衰退、あるいは、空間としての“和室”を構築してきた伝統的技術や職人の世界という素晴らしい生産システムの喪失も意味するのです。
それらの伝統的な住文化を総称して「和室文化」と呼ぶとすれば、まさに、この失われつつある「和室文化」をもっと大切にしなければなりません。それらは一度失われると再興するのは極めて困難なものであり、「文化的持続可能性」を重視すべきです。
そこで、私たちは、今こそ和室の新生のために、住み手市民の皆様と一緒に、“和室”とかかわる研究者や行政の方、あるいは作り手である設計者、大工左官などの技能を持った職人の方、木材を産み育てる林業、建設業、畳や建具製作等の様々な生産にかかわる方がたが、それぞれの知見を持って、大きく団結する会をつくりたいと思います。
ここで改めて「和室文化」を総合的に把握し、その固有の価値や多義的意味を解き明かしながら、和室の重要性を世界に示し、無形文化遺産として国際認知されることを目指します。未来に向けた新たな「和室文化」を構築していくことを宣言したいと思います。
内田青蔵(うちだ・せいぞう)
1953年生まれ。神奈川大学工学部建築学科教授を経て、2023年4月から神奈川大学特任教授。1983年東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻博士課程満期退学。工学博士。著作に『日本の近代住宅』(鹿島出版会、2016)、『「間取り」で楽しむ住宅読本』(光文社、2005)、共著に『和室学』(平凡社、2020年)、『和室礼讃』(晶文社、2022)など。
1953年生まれ。神奈川大学工学部建築学科教授を経て、2023年4月から神奈川大学特任教授。1983年東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻博士課程満期退学。工学博士。著作に『日本の近代住宅』(鹿島出版会、2016)、『「間取り」で楽しむ住宅読本』(光文社、2005)、共著に『和室学』(平凡社、2020年)、『和室礼讃』(晶文社、2022)など。